63

「帰るの明後日にしたから。明日の夜から一緒にいよ!」

愛美は、楽しそうに。

俺に、そう告げた。

「うん、分かった!嬉しいな!」

俺は、そう愛美に言って。

携帯を切る。


昨日と同じように、高田馬場駅へと歩きながら。

俺は、どうするべきなのかと考えていた。


愛美を、真剣には愛せない。

その事実に、気づいてしまった俺は。

それでも、愛美を大切に思うが故に。

葛藤していたのだ。


俺だって、もう若くはない。

愛する女と、若いうちに結婚して。

暖かい家庭を作る、という。

そんな夢を、俺だって持っていた。


自分自身のせいだから、何も言えないのだが。

夢は叶わず、いつの間にか時間ばかりが過ぎて行く。


俺は、いつも。

きっと、間違った選択をしていたのだ。

暖かい家庭を作る、ということならば。

仕事を一番に考える女を選んではならない。


俺は、麻里恵を選んだ時点で間違えていたのだ。


俺のことを一番に考えてくれる女を。

俺は、必要としていた。


そして、俺の子供のことを一番に考えてくれる。

そんな女が、きっと良いんだ……。


山手線に揺られながら。

俺は、そんなことを考えていた。