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新大阪の駅へ、俺と愛美は手を繋いで向かう。


たとえ、寝なくたって。

俺は、愛美が大切だと気づいていた。


人生は、なるようにしかならない。

しかし、その方向性を決めるのは。

自分しだいだ。


俺は、たとえまた失敗するとしても。

後悔するよりは、マシだと思っていた。


アホやな、俺も……。

俺は、愛美の横顔を見つめながら。

苦笑いしていた。


新幹線ひかり号が、新大阪駅を離れる。

乗車口で俺を見送った愛美が、にっこりと笑った。

俺も、笑いながら。

愛美の目を見つめて、ゆっくりと頷いた。


東京へ向かう新幹線の中で。

俺は、少しだけ落ち着かない気分でいた。


この先、俺は何度となく大阪に向かうだろう。

そして、きっと。

愛美と、幸せな時間を過ごすと思う。


でも、やはりそれは。

大阪にいるときだけの、現実ではないのか?


でも、そんなことを考えても仕方がないのだ。


俺は、止めようとしても止められなかった。

愛美への気持ちを、そのとき再認識していた。


愛美は、きっと美佐とは違う……。

それに今は、メールだってあるんだから……。


俺は、不安な気持ちを振り払うように。

ゆっくりと目を閉じた。