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俺は、分かっていたのだ。

愛美を受け入れてしまえば、きっと。

また俺は、愛美にのめり込んでしまう。

そんな気がしていた。


この歳にもなれば。

少し話しただけだって。

その先の関係を、だいたい想像出来てしまう。

そんなもんだ。


それはたぶん、相手の空気感を感じるというのか。

一緒にいて、気持ちの良さや安らぎを感じられるか、という。

まぁ、それがなんとなく分かってしまうということだ。


でも、本当のところは。

寝てみなければ、分からないが。


そのとき俺は、葛藤していた。

考えてみれば、ずっと。

同じことの繰り返しなのだ。


愛美を受け入れてしまえば、また美佐との二の舞になる……。


いや、美佐に限らず。

俺は、様々な間違いを何度となく犯しているのかもしれない……。


俺は、昔。

大阪に住む女と、遠距離恋愛をした。

それが美佐だった。


あんな思いは、二度としたくない。

俺は、それ以来ずっと。

遠距離恋愛は、していない。


愛美が、じっと俺の目を見つめる。

そして、こう言った。

「ひろさん、好き……」


俺は、愛美の言葉に。

微笑みながら、頷いていた。