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愛美が、俺のそばを離れなかったのは。


俺が、消そうとしても消せない。


陰を背負っていたからに違いない。



愛美は、きっと。


敏感に、ひとの心を感じられる女なのだ。



この子は、俺のことを心配してくれてるんだよな……。



俺は、愛美の笑顔を見ながら。


そんなことを考えていた。



今の、俺には。


愛美の、そんな気持ちが嬉しかった。



でも……。


ここは、大阪だし。


これは所詮、流れて行くだけの一瞬の。


ほんの偶然の出逢いでしかないのだ、きっと……。



それでも、久しぶりに俺は。


なぜか、心が安らぐのを感じていた。



でも、今の俺は。


女を愛することなんて、出来なかった。



最後の女だと思った、麻里恵にも裏切られてしまったのだ。


いくら、懲りない俺だって。


さすがに、そう簡単には立ち直れやしない。



俺は、そんなことを考えながら。


愛美の顔を、ボーっと見つめていた。



「やだっ、ひろさん、見過ぎや……」


愛美が、恥ずかしそうに俺に耳打ちする。


「いいじゃん、見たいんだからさ……」


俺は、愛美の耳元でそんなことを囁く。



すると、愛美は上気した顔で。


髪を、くるくると指で遊びながら。


上目遣いに俺の目を、熱くじっと見つめた。



ヤバっ!


やっちゃった?



俺は、無意識のうちに。


愛美のスイッチを、入れてしまったかもしれない……。