28
2月になって。
俺は、新しい部屋を探し始めた。
3月には、会社がお台場に引っ越す。
それを考えても、もう新宿にいる必要は無かった。
俺は、大井町や青物横丁に部屋を探し始めた。
麻里恵とは、もう。
連絡も取っていない。
俺は、昔のように夜遊びを始めるでもなく。
ホームページ作りや、ネットサーフィンをして。
独りで、夜を過ごしていた。
そんな、ある日の夕方。
たまたま、家に居た俺に。
麻里恵から、電話が掛かって来た。
「……もしもし。ゴメンね。実は、お願いがあって……」
麻里恵は、事務的に用件を伝えた。
麻里恵は、押し入れの中に。
撮影に必要な、特殊メイクの道具を忘れて行ったという。
俺は30分後に、それを麻里恵に渡すことを約束した。
俺は、麻里恵を恨んではいない。
仕事で急を要する事情も分かる。
だから。
麻里恵に逢って、それを渡すことを承諾したのだ。
だけど。
本当は、俺は。
麻里恵に逢いたくなんて、なかった。
麻里恵を恨みたくはない。
しかし。
俺は、結局。
麻里恵に、問答無用で棄てられたのだ。
そう思うと。
やはり、麻里恵のことを許せない俺がいた。