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「……もしもし。……わたし、家を出るから。当分は、実家にいるつもりだけど……」
麻里恵の言葉に、俺は。
もう、説得する気力も失せていた。
それでも、俺は。
「考え直すつもりは、無いの?本当に、それでいいの?」と言う。
返事をしない麻里恵に。
俺は、覚悟を決めた。
「分かった……。もう、いいから……」
俺の足下には、いつの間にか猫のチャークンが居て。
寂しそうに、俺を見上げていた。
「……チャークンは、わたしが実家に連れて行くから……」
「……うん。よろしく頼む……」
電話を切った俺は。
チャークンを抱き上げて。
ギュッと抱き締めた。
麻里恵がいない、この家で。
俺が、独りで暮らすことは有り得ない。
俺が、どこかに独りで住むことになれば。
そして、たまには家を空ける俺の仕事の事を考えても。
俺が、チャークンと一緒に暮らすのは。
もう、無理だったのだ。
次の夜。
俺が、仕事から帰ると。
麻里恵の荷物が、すっかり無くなっていた。
「相変わらず、仕事の早い女だな……」
俺は、そう呟きながら。
部屋の中を見渡した。
チャークンは、もう。
どこにも居なかった。