26
それから、俺は。
黒い革張りのソファーに寝転がって。
ただ、ボーっと時間を過ごした。
溢れ出る涙を、拭おうともせずに。
たぶん、俺は。
何度でも、麻里恵を捕まえて。
何度でも、説得をするだろう。
麻里恵のことを、諦めてしまったら。
今の俺には、何も残らない。
そんな気がしていた。
でも。
麻里恵は、たぶん。
もう、俺のところには戻って来ないだろう。
俺だって、ダテに歳を取っているわけではない。
こんな状況になれば、もう。
俺たちは、終わりなんだって。
そんなことは、経験上からも良く分かっていた。
でも。
俺は、麻里恵を本気で愛していた。
麻里恵だって、そんなことは良く分かっているはずだ。
そんな麻里恵が、こんな決断を下すなんて。
それは、簡単な決断では無かったと信じたかった。
そんなことを考えながらも、俺は。
体が震えるような、胸が痛くなるような。
そんな絶望感に包まれていた。
やはり、女なんて。
所詮、そんなものさ……。
俺は、フリースの袖で乱暴に涙を拭って。
メリットライトのハードパックから1本取り出して。
純銀のジッポーで火を点けた。
そのとき。
俺の携帯に電話が掛かった。
麻里恵だ!