17
本当は、麻里恵と一緒に見るはずの景色を。
結局、俺は独りで見ていた。
宮島口の「むさし」で、山賊むすびを買った俺は。
桟橋から、JRのフェリーに乗る。
冷たい瀬戸内海の潮風に吹かれながら、俺は。
ボーっと、麻里恵のことを考えていた。
麻里恵にとって、俺という存在は。
いったい何なんだろう?
俺にとって。
仕事と麻里恵のどちらが大切か、なんて。
そんな質問は、愚問でしかない。
もちろん、どちらも大切に決まっているから。
どちらのほうが大切か、なんて。
そんなことは、考えること自体が無駄なことだ。
だから、俺は。
麻里恵も、そうだと信じている。
麻里恵にとっての、俺は。
絶対に必要な存在なのだ、きっと……。
厳島神社の大鳥居を見ながら。
「きっと、大丈夫……」
俺は、いつの間にかそんな言葉を呟いていた。
フェリーを降りた俺は。
フェリー乗り場の近くのベンチに座って。
にぎりこぶし2つ分はある、大きな山賊むすびを食べる。
寄って来る鹿を警戒しながら、俺は。
あっという間に、むすびを平らげた。
やっぱり、最高に旨い!
でも。
寒い、な……。
青い空と海を見ながら。
そのとき、俺の目には。
少しだけ、涙が滲んでいた。