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本当は、麻里恵と一緒に見るはずの景色を。


結局、俺は独りで見ていた。



宮島口の「むさし」で、山賊むすびを買った俺は。


桟橋から、JRのフェリーに乗る。



冷たい瀬戸内海の潮風に吹かれながら、俺は。


ボーっと、麻里恵のことを考えていた。



麻里恵にとって、俺という存在は。


いったい何なんだろう?



俺にとって。


仕事と麻里恵のどちらが大切か、なんて。


そんな質問は、愚問でしかない。



もちろん、どちらも大切に決まっているから。


どちらのほうが大切か、なんて。


そんなことは、考えること自体が無駄なことだ。



だから、俺は。


麻里恵も、そうだと信じている。



麻里恵にとっての、俺は。


絶対に必要な存在なのだ、きっと……。



厳島神社の大鳥居を見ながら。


「きっと、大丈夫……」


俺は、いつの間にかそんな言葉を呟いていた。



フェリーを降りた俺は。


フェリー乗り場の近くのベンチに座って。


にぎりこぶし2つ分はある、大きな山賊むすびを食べる。



寄って来る鹿を警戒しながら、俺は。


あっという間に、むすびを平らげた。


やっぱり、最高に旨い!



でも。


寒い、な……。



青い空と海を見ながら。


そのとき、俺の目には。


少しだけ、涙が滲んでいた。