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今回は、きっと。


タイミングが悪かっただけなんだ……。



麻里恵を、広島に連れてくるチャンスなんて。


これから、いくらでもあるじゃないか……。



俺は、不安で仕方ない気持ちを。


それでも、そんな風に納得しようとしていた。



その夜、俺は。


麻里恵に、何度も電話しようとした。



でも。


結局は、しなかった。


というか、本当は俺は。


いま、麻里恵と。


これ以上の話をすることが、怖かったのかもしれない。



すべては、東京に戻ってからの話だ。


きっと、そのほうがいいんだ……。


俺は、そんな風に納得しようとしていた。



次の日の朝。


俺は、お袋に電話して麻里恵が来れないと伝えた。



もちろん、麻里恵の映画の撮影が延びたことにして。



当たり前だが。


お袋は、とても残念がってくれた。



心が、少し寒かった。



今日の夕食は。


ホテルのディナーを、親父が予約してくれていた。


麻里恵が来れなくなったとしても。


せっかくだから、家族でそのまま食事をすることにした。



それまで、俺は。


独りでいることにした。


もちろん、独りでいたかったからだ。



11時過ぎに、ホテルを出た俺は。


のんびりと路面電車に乗って、宮島へと向かった。