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何回目かの呼び出し音のあと。
麻里恵の携帯は、留守番電話になった。
「もしもし、俺……。あのさ…………。仕事、頑張って。連絡待ってるから……」
それだけの言葉を、留守電に吹き込んだ俺は。
川を渡って来た、少しだけ冷たい夜風に吹かれながら思う。
麻里恵は、悪くない。
たとえ、麻里恵が来れなかったとしても。
それはただ、それだけのことだ。
俺たちの仕事は、そんな仕事だから。
いや、何だって仕事はそんなものだけど……。
だから、来れないとしても麻里恵のせいじゃない。
俺は、覚悟を決めた。
もし、麻里恵が来なくても。
俺は、麻里恵を責めたりはしない。
親や妹たちも、きっと理解してくれる……。
午後10時過ぎに、ホテルに戻った俺は。
ツインルームの、ふたつ並んだベッドのひとつに寝転びながら。
ゆっくりと目を閉じた。
しばらくして。
携帯が、ブルブルと振動を始めた。
電話だ!
Gパンの前ポケットから、携帯を取り出した俺は。
液晶の表示を見る。
麻里恵だ!
「もしもし、ひろ?あの、ね……」
麻里恵の声は、いつもと同じように明るい。
俺は、ホッとしながら。
麻里恵の、次の言葉を待った。