12


午後2時過ぎに、俺は。


広島の街の中心部にあるホテルに、独りでチェックインした。



「連れは、遅れて明日来ますから……」


そんなことを、フロントで言いながら。


俺は、少しだけ弱気になっていた。



麻里恵は、本当に来るのだろうか?


でも。


俺が来ることを祈っても、祈らなくても。


結果は、なるようにしかならないのだ。



独りでは、何もすることがなかった俺は。


実家に顔を出すことにした。



本通りを、ブラブラ歩いたあと。


紙屋町から、広電に乗って己斐(こい)へと向かった。



本当なら、バスのほうが早いが。


ヒマな俺は、のんびりと路面電車に乗りたかったのだ。



電車から、久しぶりに見た広島の街並みは。


変わっているだろうが、変わっていない気がした。



そして、俺は。


ゆっくりと目を閉じる。


この街で過ごした日々を思い出しながら。



忘れようとしても、忘れられないこと。


思い出したくても、もうはっきりとは思い出せないこと。



この街を離れて、もうすぐ14年が経とうとしていた。



そして、俺は。


いろいろな女と、この街で思い出を作った。


だから麻里恵とも、俺は……。



麻里恵は、必ず来る。


俺は、そう信じていた。