43 『春のような冬の日に、思い出したこと』
まるで、台風一過のような天気。
冬の嵐の夜が明けて。
今日は、朝から最高の天気。
4月並みに暖かくって。
空は、どこまでも青く深い。
そんな今日、ぼくは。
撮影のために、久しぶりに、この街を訪れた。
この街は、昔。
君と暮らした街。
あの頃は、本当に楽しかった。
でも、時間の流れは。
あの頃と、街の景色をすっかり変えていた。
それは。
時間が経ったんだな、って。
嫌でも思い知らされる瞬間。
駅を降りた、ぼくは。
昔、君とよく一緒に歩いた道を。
今日は、独りで歩く。
懐かしい、この街の匂いがする。
そのとき、突然。
ぼくは、思い出してしまったんだ。
そう。
今日と同じように。
こんなに暖かな、ある冬の日に。
君と交わした、約束を。
君は、ぼくに言ったよね。
「夢を叶えたいなら、叶うって信じること。やる前から諦めたら、何も始まらないよ」って。
そして、君は。
自分の夢を叶えるために、ぼくから離れて行った。
ぼくは、悲しかったけど。
君を諦めたんだ。
だって。
君を、愛していたから。
君は、ぼくに言ったよね。
「約束して。出来るくせに、出来ないフリしないって。あなたは、もっと出来るはずだから……」
あの頃の、ぼくは。
君の気持ちや、言葉の意味がよく分からなかったんだと思う。
ぼくは、今。
自分が全力を出しているって。
言い切る自信がなかった。
でも。
君との約束を、思い出したぼくは。
もう少しだけでも、頑張ってみようと思えたんだ。
街は変わっても。
きっと君との思い出は、ずっと変わらない。
ぼくは、真っ青な空を見上げながら。
あの頃の君に、ありがとうと呟いた。
『春のような冬の日に、思い出したこと』
了