28 『君が、微笑みかけてくれたから』
君に逢う。
ただ、そのためだけに。
俺はきっと、そのパーティーに出掛けたんだ。
君は、いつものように。
俺の存在に、気がつかないフリをしていた。
まぁ、仕方がない、か……。
俺と君との関係は。
もう2年近くも、こんな感じだったんだから。
いつもならば。
俺も、君を無視したまま。
その場所を離れる。
でも、今夜。
俺は、少しだけ勇気を出して。
帰りぎわに、君を捕まえた。
そして、ちゃんと。
「じゃあ、帰るね!」って言ったんだ。
君は、少し驚いた顔をして。
「……もう帰っちゃうの?」と、言った。
今までの、俺たちのことを考えると。
君のトンチンカンな返事が。
俺には、楽しくって。
それから、俺たちは。
本当に、久しぶりに。
向き合って、ひとつふたつ言葉を交わした。
そんな短いやりとりだったけど。
俺は。
本当に嬉しかったんだ。
もしかしたら。
今までと、何も変わらないのかもしれないけれど。
だけど、きっと。
確実に、それまでとは何かが変わったんだ、って。
俺は、そんな風に思うことが出来たんだ。
だって、さ……。
『君が、微笑みかけてくれたから』
了