6 『49分53秒』
ぼくは、長電話が嫌いだ。
そんな時間があるならば、逢いに行けばいい。
ずっと、そんな風に考えていた。
ある秋の日の夜。
ぼくは、久しぶりに君に電話をしてみた。
君の声は、予想よりも明るくて。
ぼくは、少しだけホッとした。
君のブログには、なんだか一人で呑んでいる、みたいな。
そんなちょっと暗い感じのオーラが見え隠れしていて。
ぼくは、少しだけ心配だったんだ。
ぼくの電話を君は。
とても喜んでくれた。
ありがとう!って、言ってくれる君のことを。
ぼくは心の中で、こちらこそありがとう!って。
本当に感謝していたんだ。
だって。
もしかしたら、もう二度と逢えないって。
そんな風に覚悟していたぼくに。
君は、またチャンスをくれたんだから。
冷たい秋の夜風が、ぼくを包む。
だけど、ぼくは。
とても心が暖かかったから、平気だった。
夜の街を歩きながら、ぼくは君と話を続けた。
本当は、逢ってずっと話をしたいんだけど……。
でも。
そのタイミングは、もう少し先にしたほうが良いと思っていた。
いつまでも話を続けていたかったけど。
いつの間にか、時計の針は午前1時を回っていた。
君は明日も早いから。
ぼくは、電話を切ることにした。
「じゃあ、またね。おやすみ……」
本当なら、毎日でも電話をしたい。
でも、そうしたら。
きっとまた前のように、君を好きになり過ぎてしまうだろう。
だから、ぼくは。
君との距離を、あえて取るようにしているんだよ。
ぼくは、夜空に明るく輝く、真ん丸の月を見た。
きっと君も今、同じ月を見ているんだと思いながら。
ケータイの液晶に、通話時間が出ていた。
それを見たぼくは、苦笑いする。
うん。
君への気持ちを、感じながら。
『49分53秒』
了