4 『君が、ぼくの手を取った』
その日、ぼくは。
珍しく、朝から多摩川の河川敷にいた。
バーベキューをやりながら、仲間とジャンベを叩く。
そんな休日の過ごし方は、ぼくにとっては超レアなことだった。
このところ、いろんなことが起こって。
久しぶりに、ジャンベを叩いたぼくは。
バーベキューをやるよりも、ジャンベを叩くことに夢中になっていた。
ひとり3000円会費で20人近く集まったせいもあって。
バーベキューは、異常に豪華なメニューだった。
でも。
一応ダイエット中のぼくは、なるべく食べるのをセーブしていたんだ。
日が暮れ始めた頃。
ぼくは、ちょっとした用事があって。
みんなより早めに、その場を離れることにした。
「じゃあね、帰るわ」
ぼくは、バーベキューの火の世話をしていた君のそばに行って。
そんな風に、声を掛けた。
そのとき。
君は突然、ぼくの右手を握った。
えっ?
ぼくは、君の意外な行動に驚いていた。
だって。
君がそんなことをするなんて、始めてだったんだから。
ぼくは、ドキドキしながら君の顔を見た。
少し恥ずかしそうな顔をした君は。
「あんまり食べてなかったでしょ?……満足出来たかな?って思って」と笑った。
ぼくは。
君の、そんな気持ちがとても嬉しくて。
君の瞳を、じっと見つめながら。
ゆっくりと頷いた。
そして。
ぼくは、君を引き寄せて。
耳元で囁いたんだ。
ずっと想い続けていた。
君への想いを、やっと。
『君が、ぼくの手を取った』
了