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くだらない男だな……。
俺は、その男を無視してその場を離れた。
これ以上、ここに居ても意味がない。
もし、恭子が俺のところに戻って来ないなら。
もう、それはそれで良い。
人の心なんて、思い通りにはならない。
いくら、愛していても。
いくら、大切に思っても。
それは、俺自身だって。
美佐や他の女たちに感じさせて来たことなのだ。
俺は、淡々と仕事をこなす。
仕事をこなす、って言えるほどには。
もちろん、まだまだなってはいないけど。
仕事に集中すれば、他のことは忘れられるから。
その日、仕事が遅く終わった俺は。
タクシーで、自分の部屋まで帰って来た。
ROLEXの針は、午前2時を回っていた。
俺の部屋は、灯りが消えたままだった。
どうやら、恭子は来ていないらしい。
俺は、ため息をつきながら。
灯りの消えた部屋に入る。
冬の冷たさが、心にも堪えた。
結局、俺は。
誰のことも、ちゃんと愛することが出来ないのだ。
それは、きっと。
誰かのせいではなくて、すべては自分自身のせいなのだ。
部屋の灯りを点けると、ベッドに恭子が寝ていた。
俺は、それでも。
冷たく冷えた心で、恭子を見つめていた。