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えっ?


恭子……!?



駅前から少し入った路地で。


恭子が、男と抱き合っていた。



涙を流しながら、恭子は。


その男に抱きついて、何度もキスをしていた。



俺は、そんな恭子を見て。


さすがに、冷静ではいられなかった。



「何やってんだよ、恭子!」


早朝の江古田の街に、俺の声が響く。



恭子は、驚いたように俺を見た。


一緒にいた男は、確か……。


恭子と同じ学科のヤツだ。


名前は知らない。



俺は、ひとつ息をついて。


ゆっくりと、恭子とその男のそばに行く。



「……なんでだよ?恭子……。どうして……?」


俺は、混乱しながらも。


冷静に話をしようと考えた。



恭子は、また酔っていた。


だから、ここで感情的になっても。


何も良いことはないのだ。



そして俺は、会社に向かわなければならない。


そのタイムリミットが迫っていた。



恭子と仕事と、どっちが大切か?という問題ではなく。


俺は、必ず時間までに会社に行かなけばならない。


それが、俺のやっている仕事なのだから。



「あれっ?恭子とは別れたって聞いてるけど。違うの?」


その男は、焦りを隠すように。


わざと冷静なフリをして、そう言った。