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そして、俺は。
恭子の部屋へと向かう。
俺には、やはり恭子しかいないのだ。
こんな俺を、無条件で愛してくれるのは。
もう、恭子しかいない。
そんな気がしていた。
もし恭子が、俺をずっと愛してくれるならば。
俺は、恭子の愛に応えてやらなければならないと思った。
そのときの俺は。
恭子の愛を、無条件で信じていた。
恭子は、絶対に俺から離れないって。
俺はきっと、そんな安心感が欲しかったのだ。
そして、俺は。
美佐との記憶を、封印しようとしていた。
美佐との思い出を、自ら消す。
それは、きっと。
自分自身の、心の痛みから逃げるために。
そうでもしなければ、俺は。
耐えられない気がしたから……。
「おかえり、ひろ!んっ?どうしたの!目が真っ赤だよ!」
そう言いながら、恭子は。
心配そうに、俺の顔をじっと見つめた。
ごめん、恭子……。
俺は、恭子を優しく抱き締めながら。
耳元で囁く。
「俺……美佐と別れてきたよ。もう余計な心配するなよ、恭子……」
恭子は、驚いたように俺の顔を見つめて。
そのあと。
なぜだか、少し寂しそうに笑った。
いつの間にか、季節は。
秋を過ぎて、冬になっていた。