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しかし。
それは、美佐だけが悪いのではない。
俺の美佐との向き合い方にも問題があったのだ、きっと。
徹底的に、美佐が。
俺だけを見ているように出来なかったのは。
きっと、俺の力不足なのだろう。
俺は、やはり。
美佐を、悪者にはしたくなかった。
だって、俺は。
ずっと、美佐を愛し続けて来たのだから。
だけど、今だけは。
俺は、裏切られ続けた相手として美佐に接する。
美佐との決着を着けるために。
「ごめん、俺……。もう無理なんだ、お前とは……」
俺は、無表情を作って美佐の目を見据えた。
美佐は、潤んだ瞳で。
それでも、涙を流さないようにしながら。
無言のまま、じっと俺を見ていた。
しばらく経ったあと、美佐がゆっくりと口を開く。
「好きなひと、出来たんでしょ?」
それは、予想していた言葉だったが。
現実に美佐から聞かされると、かなりキツい。
でも、俺は……。
「それだけが理由じゃないけど、ね……」
俺は、冷たくなりすぎないように。
でも、かなり冷たい言葉を冷静に吐いた。
「……どんなひと、なの?」
「……初めて逢ったんだ。俺が尊敬出来る女って」
そのとき俺は、なぜか。
去って行った、奈々美のことを考えていた。