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次の土曜日。
早めに仕事が終わった俺は。
そのまま、美佐が泊まっているという新宿のホテルに向かった。
さっき確認した、俺の留守電のメッセージには。
美佐の声で、ホテル名と部屋番号が吹き込まれていた。
俺は、左手に巻いたシルバーのROLEX OYSTER PERPETUAL DATEJUST 1601を見る。
針は、午後8時を少し回っていた。
そのホテルは、新宿駅のすぐ近くにあった。
しかし。
美佐が、ひとりで東京に来るなんて。
しかも、泊まりで来るなんて。
俺には、意外だった。
今まで、俺が望んだって。
美佐は、親が許してくれないからと言ってずっと拒否してきたのに。
いまさら、遅いよ美佐……。
俺は、そんなことを思いながら。
フロントを抜けて、エレベーターに乗る。
そして俺は、美佐のいる部屋の前に立った。
1207号室、か……。
俺は、ドアを軽く2回ノックする。
しばらくして、鍵が開く音がして。
ドアが、ゆっくりと開かれた。
そして。
そこには、美佐が立っていた。
「久しぶり、ひろ……」
少しだけ、寂しそうな陰を見せながらも。
美佐は、いつもの美佐と同じように。
俺に、優しく微笑みかけてくれる。
俺は、切なさで胸が焼け焦げていた。
でも、俺は……。