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俺は、正直に言うと。


恭子のためにだったら、美佐と別れたりはしなかった。



ズルいのは、良く分かっていたけど。


恭子と、ずっと一緒にいるという未来は。


俺には、考えられなかったからだ。



それでも、俺は。


恭子のことを、大切に思っていた。



そんな微妙なバランスで、ずっと。


俺と恭子は、暮らして来たのだ。



そんな、ある日。


俺の留守電に、一件のメッセージが入った。



「……わたし、やっぱり納得出来ないの。だから今週末、東京に行きます。ひろに逢えなくても……」



美佐……?


俺は、いつもとは違う美佐の強い言葉に。


正直、混乱していた。



出来れば、もう。


美佐には逢いたくなかった。



しかし、俺は。


わざわざ、東京までやって来る美佐に。


もう一度、逢わなければならないと思った。



俺は。


美佐のことを、嫌いになった訳ではない。



だけど。


だからって、また美佐と続けることに。


一体、何の意味があるというのだ?


でも……。



俺は、葛藤していた。


しかし。


美佐をまだ、愛していればこそ。


いま美佐を、俺から解放してやらなければ、と思ったのだ。