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俺は、そのとき既に分かっていたのだ。
早綾が、俺を避ける理由なんて。
ひとつしかないのだから。
早綾は、やはり。
奈々美に、良く似ていた。
「やっぱり、彼氏とは、別れられないよ……ゴメン……」
早綾の言葉に、俺は。
気が抜けてしまっていた。
俺は、誰のために。
美佐を棄てたというのだ!
でも。
俺は、冷静で。
早綾に、怒る気にはなれなかった。
早綾のせいじゃなくて。
すべては、俺のせいなのだから。
俺は、精一杯の気力を振り絞って。
早綾に、笑顔で向かい合う。
「……良かったじゃん、早綾。じゃあ、な……」
それだけを早綾に言った俺は。
その場から、早綾を見送った。
人ゴミのなかに、足早に消えて行く早綾の背中が。
ぼんやりと、涙で滲んでいた。
それから。
ボーっとしたままの俺は。
自分の部屋に帰ることだけを、目的とするように。
フラフラと自分のアパートを目指した。
あまり、途中の記憶もないまま。
なんとか、アパートまでたどり着いた俺は。
自分の部屋に、なぜか灯りが点いていることに気づいた。
恭子……?
俺は、足早に自分の部屋へ急いだ。