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恭子は、まだ東京に帰っていない。
俺は、早く恭子に逢いたかった。
それは、もちろん。
恭子と別れるために、だ。
早綾とは、毎日顔を合わせていた。
あと数日で、このイベントも終わる。
俺は、思った。
もし早綾との、あの夜が無かったら。
このあと、きっと。
俺は、早綾と逢うことは無かったのかもしれない。
でも、俺は。
早綾を選んだ。
美佐と別れて。
恭子とも別れるのだ。
そして、俺は。
早綾だけを愛する。
「早綾、これからどうする?」
その日、俺は混雑する有楽町線の電車のなかで。
早綾に、そうささやいた。
「……う、うん。今夜は、疲れたから帰っても良い?」
そう言って早綾は、ニッコリと笑った。
いつもとは、少しだけ違う早綾の態度に。
俺は、少しだけ不安を感じていた。
でも。
きっと、気のせいに違いないさ……。
俺は、そんな風に。
自分を納得させたかったのだ。
そして、次の日から。
早綾は、俺を避け始めた。
今までとは、明らかに違う早綾の態度に。
俺は、困惑した。
イベントの最終日。
俺は、帰り道に早綾を捕まえた。
「どうしたの、早綾?……ワケを聞かせてくれないか……」