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美佐の細いカラダを引き寄せて。


俺は、ギュッと抱き締めた。



美佐と別れるという。


さっきまでの決意は、大きく揺らいでいた。


でも……。



俺は、冷静になろうと努めていた。


今の感情に流されても。


結局は、何も変わらないのだから。



俺は、美佐を抱きしめたまま。


耳元で囁いた。


「なぁ、美佐……。俺と一緒に、東京で……暮らさないか?」



俺は、そのとき最後の賭けに出たのだ。


もし美佐が、俺の提案を受け入れてくれたら。


俺は、美佐と……。



俺は、美佐の言葉を待つ。


そして美佐が、ゆっくりと口を開いた。


「ごめんなさい……。今は無理、だよ……」



やっぱり、そうか……。


俺は、ビルの間に見える夜空を見上げた。



奈々美のように。


全てを捨ててでも、男を取る。



そんな愛は、やっぱり美佐にはないんだ……。



俺は、美佐の顔をじっと見る。


美佐は、やはり。


とても、美しい。



でも、俺は。


もう、これ以上美佐と続けるのはやめようと思った。



俺は、美佐を。


幸せにすることは、出来そうにないから。



「……俺、さ。もう、美佐に逢うのやめようかと思って……!」



そのとき。


美佐が、キスで俺の言葉を止めた。