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ホテルのロビーの外れにある、ソファーに座って。
俺は、じっと美佐を待つ。
このまま美佐が現れなければ。
俺は、まだ。
美佐と別れ話をしなくてもいいのに、な……。
情けないくらいに、俺は。
そのとき、まだ葛藤していたのだ。
俺は、マルボロに火を点けて。
ゆっくりと煙を吸い込んだ。
吐き出した煙の、その先に。
俺は、美佐の姿を見つけた。
「ごめんなさい、遅くなって……久しぶりだね、ひろ……」
ニッコリと笑った、美佐の笑顔に。
俺の胸は、ズキリと痛んだ。
「ちょっと、散歩しよう……」
そう言いながら、俺は。
美佐の手をとって、ホテルのロビーを出た。
夜の新宿副都心は、人の通りも少ない。
俺と美佐は、少し歩いて。
ビルとビルの谷間にある、小さな公園のベンチに座った。
俺と美佐は、手を繋いだまま。
ふたりともしばらくの間、押し黙っていた。
「……今日はね、ディズニーランドに行ったの……」
美佐が、小さな声でそう言った。
「本当は、ひろとふたりで行きたかった……」
美佐が、真顔で俺の目をじっと見つめていた。
そのとき、俺は気づいたんだ。
やっぱり、俺は。
美佐を愛している、って。
だから、俺は……。