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美佐が東京にやって来た日は。
いつもと変わらない、天気の良い暑い日だった。
美佐は友達数人と一緒に、2泊3日で東京に来たらしい。
よくあるような、お決まりの東京観光をするようだ。
本当なら、美佐と一緒に夜を過ごしたいところだが。
もちろん、俺はそんな気持ちにはなれない。
そして、友達と一緒に来ている状況では。
美佐は、友達を置いて俺と一緒にいるなんてしないだろう。
俺と美佐は、まだ。
一緒に、朝まで夜を過ごしたことがなかった。
俺が大阪に泊まっていても。
美佐は、必ず家に帰った。
厳しい家だから、仕方がないと思うが。
俺は、寂しかった。
美佐は、新宿副都心のホテルに泊まっていた。
その夜、俺は。
美佐には逢うために、そのホテルに向かった。
俺は、買ったばかりの中古のROLEXを見る。
針は、午後10時を回っていた。
ホテルのロビーで、美佐を待つ。
そのとき、俺の心は。
激しく葛藤していたのだ。
美佐を失いたくない。
でも。
俺には、もう。
美佐との未来が見えなくなっていた。
漠然と、美佐との結婚を夢見れるほど。
俺はもう、子供ではなくなっていたのだ。