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次の夜。


早めに家に帰った俺は。


何度も躊躇しながら。


美佐に、電話をかけようとしていた。



何度目かでやっと、美佐の番号をちゃんと押して。


俺は、ゆっくりと目を閉じた。



「…ひろ!?久しぶり!元気だった?」


美佐の声は、いつものように明るい。



美佐……。



俺は。


東京で俺が、美佐にしようとしていることを思うと。


そのとき、激しく胸が痛んだ。



しかし、俺は……。


そうすることを決めたのだ。



「……うん、お前は?そうか……あのさ、来るんだろ?東京……。逢いたいんだけど……」



俺は、努めていつもと変わらない風に。


明るく、話をしているつもりだった。



しかし。


やはり、美佐には。


いつもとは違う、俺の何かが伝わってしまったらしい。



「……うん。お友達と一緒に行くから、長い時間は無理かもしれないけど……一度、ひろの部屋も見てみたいし、ね……」


そう言って美佐は、寂しそうな声で笑った。



電話を切った俺は。


ベッドに横になりながら、考える。



やっぱり、ダメになっちゃうんだよな……。


遠距離恋愛は、やはり難しい。


俺は、遠距離恋愛だからダメになるということに反発して。


ずっと、美佐との関係を続けようと思っていた。



しかし、本当は。


俺と美佐との関係なんて。


とっくに破綻していたに違いない。



離れていたからこそ。


なんとなく、続いていただけなのかもしれないのだから。