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池袋西口から10分ほど歩いた場所に。


早綾のマンションはあるという。



昔の雰囲気を残す、静かな住宅街を。


俺と早綾は、手を繋いで歩く。


俺は何気なく、この街を選んだ早綾をほめた。



不思議だが。


住んでいる街と、その人間の雰囲気はマッチする。


そんなもんだ。



そして。


俺が、いま住む街。


ホントはちょっと違うけど、俺が育った街。


そして、早綾が選んだこの街。



それらは全て、雰囲気が似ていた。



早綾は、きっと。


美佐や恭子とは、違った安らぎを。


俺に与えてくれる。


俺は、早綾の横顔を見つめながら。


そんな気がしていた。



早綾のマンションは、真新しい3階建てのわりと小さな建物だった。


俺と早綾は、階段で三階に上がる。



早綾の部屋の前に着く。


俺は、ゆっくりと早綾を抱きしめる。



「あっ……」


小さく声を洩らす早綾の唇を。


俺は、優しく俺の唇でふさぐ。



「早綾……。俺は、お前が好きだ。だけど、まだ。……まだ、お前の所には行けない……」


早綾は、潤んだ瞳で俺の目をじっと見つめていた。


「お前も、きっと俺と同じ気持ちだと思う。だから、お互いにキチンと整理を着けよう……」