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早綾は、ちょっと驚いた顔をして。
頬を、ほんのり赤く染めた。
そして、上目遣いで俺の目を見つめる。
行ける!
俺は、早綾が嫌がっていないことにホッとしていた。
と、いうか。
早綾が俺を、この店に誘ったときから。
この勝負は、本当は決まっていたのだ。
俺には、きっと自信があったのだと思う。
今夜、早綾を落とすことが出来るという自信が。
奈々美に棄てられた俺は。
本当は、自分に自信を無くしていた。
だからこそ、今。
奈々美の姿を、重ねることが出来る早綾を。
確実に落とすことが、俺には大切だったのだ。
店を出た、俺と早綾は。
初めて、手を繋いで歩いた。
早綾も、俺も。
ほとんど何も話さずに、歩く。
早綾の手は小さくて、指も細い。
俺は、そんな早綾の手を優しく握りながら。
すぐそばにいる早綾を、愛おしく感じていた。
その気持ちは。
果たして、早綾自身に向けられたものなのか?
それとも、奈々美への未練から生まれたものなのか?
そのときの俺には、良く分からなかった。
でも、今の俺は。
早綾を愛そうとすることで。
気持ちのバランスを、取ろうとしていたに違いない。