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早綾の話は、俺の思った通りで。
離れてしまった、彼氏とのことだった。
正直、そんな話を聞かされたって。
俺は、面白い訳がない。
でも。
早綾の気持ちを考えると。
俺は、早綾に冷たくすることなんて出来なかった。
だから、俺は。
早綾の話を、頷きながら聞いてやる。
早綾の話によれば。
大学を卒業して、就職のために地元に帰った彼氏と。
最近、連絡が取れないという。
男の立場から言えば。
原因は何であれ、彼氏は早綾への興味を無くした、ということだ。
でも。
ストレートに、そんなことを早綾に言うのもかわいそうだし、な……。
「……ありがとう、ね。ひろさん。こんなつまらない話を聞いてくれて……」
そう言って、寂しそうに笑う早綾が。
俺には、あのときの奈々美に見えた。
俺は、そのとき。
アタマの中で、カチッとスイッチが入った気がした。
奈々美に逃げられた俺は。
奈々美へ向けた気持ちを、持て余していたのだ。
だから。
その気持ちを、早綾に向ける。
俺は、早綾の瞳をじっと見つめながら。
テーブルの上に置いた、早綾の手に優しく触れた。