76


早綾と俺は、一緒に池袋で地下鉄を降りた。



西口を出て少し歩いたところに、その店はあった。


小さいが、家庭的なフレンチを食べさせる、旨いと評判の店だ。



店の奥の、小さなテーブルに。


俺たちは、向かい合って座った。


「えっとね、ひろさんと一緒に、このお店に来たくって……」


そう言いながら、微笑む早綾に。


俺は、そのときまた奈々美の姿を重ねてしまっていた。



肌の白さ以外は、似てないはずのふたりだったが。


確かに俺は、早綾に奈々美を重ねていた。



ふたりには、共通する何かがあるのだろうか……。



ペリエと白ワインで乾杯した、俺と早綾は。


いろいろな種類の、チーズをつまみながら。


初めてふたりだけの、落ち着いた時間を過ごす。



もう、こんな風に。


早綾とふたりで過ごすことも無いんだろうな、と思うと。


俺は、やはり。


少しだけ、寂しい気がした。



俺は、早綾の顔を見ながら考える。


どうして俺は、早綾に奈々美を重ねてしまうのだろう?



そのとき、早綾がつぶやくように言った。


「あたし、ね。大好きなひとがいるの。でも……」



あぁ、そうか……。


そのとき、俺は気づいたんだ。



早綾は、あのときの奈々美と同じなんだ、って。