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奈々美の選択を。


傷つきながらも、結局は。


素直に受け入れた、俺だった。



しかし。


失った奈々美の大きさが。


もしかしたら、そのときの俺を。


少しずつ、狂わせていたのかもしれない。



毎日、顔を合わせる早綾と俺は。


次第に、仲良くなっていた。



仕事が終わるタイミングが合えば。


俺と早綾は、一緒に帰った。



とはいえ、俺は。


まだ、早綾とふたりきりで呑みに行ったりはしていない。



8月も終わりに近づいた、ある日。


早綾が俺に、こう言った。


「あの、ね……。ちょっと、今夜時間もらえませんか?」



早綾の突然の誘いに、少し驚きながら。


「……うん?もちろん、いいけど……」


と、そんな返事を返しながら、俺は。


そんな風に誘ってくれた早綾に、感謝していた。



長かった夏のイベントも、もうすぐ終わる。


そうすれば、もちろん。


もう、早綾と顔を合わせることも無いだろう。



だから、俺は。


このイベントが終わる前に。


早綾とふたりで逢いたい、と思っていたのだ。



早綾は、可愛くって。


もう逢えなくなるのは、寂しい。


でも……。



そのときの、俺は。


確かに、そんな軽い感じで。


早綾のことを、考えていた。