75
奈々美の選択を。
傷つきながらも、結局は。
素直に受け入れた、俺だった。
しかし。
失った奈々美の大きさが。
もしかしたら、そのときの俺を。
少しずつ、狂わせていたのかもしれない。
毎日、顔を合わせる早綾と俺は。
次第に、仲良くなっていた。
仕事が終わるタイミングが合えば。
俺と早綾は、一緒に帰った。
とはいえ、俺は。
まだ、早綾とふたりきりで呑みに行ったりはしていない。
8月も終わりに近づいた、ある日。
早綾が俺に、こう言った。
「あの、ね……。ちょっと、今夜時間もらえませんか?」
早綾の突然の誘いに、少し驚きながら。
「……うん?もちろん、いいけど……」
と、そんな返事を返しながら、俺は。
そんな風に誘ってくれた早綾に、感謝していた。
長かった夏のイベントも、もうすぐ終わる。
そうすれば、もちろん。
もう、早綾と顔を合わせることも無いだろう。
だから、俺は。
このイベントが終わる前に。
早綾とふたりで逢いたい、と思っていたのだ。
早綾は、可愛くって。
もう逢えなくなるのは、寂しい。
でも……。
そのときの、俺は。
確かに、そんな軽い感じで。
早綾のことを、考えていた。