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このイベントには、奈々美はいなかった。


春のように。


グループの新人全員が、集められた訳ではないらしい。



俺の仕事は、仮設のスタジオで。


新人アナウンサーが、定期的にしゃべるニュースなど。


そんな撮影をすることだった。



奈々美のことや。


恭子や美佐のこと。



そんなことを背負った、俺は。


すっきりしない気持ちのままで。


ただ仕事を、こなしていた。



朝8時から、夜の8時まで。


ほぼ毎日、晴海にいた俺には。


奈々美に逢う時間なんて、なかった。



そして。


恭子は、夏休みで。


秋田の実家に帰っていた。



だから、俺は。


夜には独りで、いろいろと考えながら時を過ごした。



酒が飲めない、俺は。


もちろんいつだって、シラフだった。



俺は、ドクターペッパーを飲みながら。


冷静に、いろいろなことを考えた。



でも。


やはり、結論は出ない。



きっと、何かのキッカケがなければ。


この状況は、変わらないのだと思う。



そして、たぶん俺は。


今の状況が、本当は嫌ではないのかもしれない……。



仕事が、忙しくなると。


学生の時と同じように、時間があっても。


そんなことを、都合良く考えられるようになる。



俺は、なんとなく。


そんな気がしていた。