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奈々美の肌は、きめ細やかで白い。


手に触れる、その滑らかな肌に。


俺は、我を忘れそうになる。



そして。


薄暗い部屋のなかでも。


奈々美の肌の白さは、際立って見えた。



綺麗だ、奈々美……。



でも。


俺は、まだ葛藤していた。



これから先に、進むべきか?


それとも……。



「ねぇ、抱いて……けいすけ……」




奈々美が、ふと漏らしたその名前に。


俺の気持ちは、急激に萎える。



それが彼氏の名前、か……。



奈々美は、無意識に彼氏の名前を口にしていた。



俺は、奈々美の顔を見下ろしながら。


美佐のことを考えていた。



美佐は、俺を裏切らない。


そう信じることで。


俺は、生きている。



そして、恭子のことだって。


俺は、ちゃんと愛さなくてはならないのだ。



俺は、奈々美をギュッと抱きしめながら目を閉じる。



ごめん、奈々美……。



次の朝。


俺と奈々美は、一緒に代々木へと向かった。



俺たちは、まるで。


何もなかったかのように、また。


くだらない話をしながら、笑い合う。



きっと、これで良かったんだ。



俺は、そんな風に思いながら。


奈々美を見つめていた。