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「……彼とは、もう何年も遠距離を続けてたの」
なるほど。
そういうことか……。
「やっと、一緒に居られると思ったのに……」
皮肉なもんだな……。
俺は、ジンジャーエールを一口飲みながら。
奈々美を、優しく見つめた。
「最近ね、ちょっと彼とうまくいってないんだ……」
奈々美は、そう言いながらグラスの白ワインを飲み干した。
「……あのさ、奈々美さん。実は俺も、さ……」と。
俺は、自分も。
東京と大阪で、遠距離恋愛しているという事実を告げた。
「そうなんだ……。ひろくんも、あたしと一緒なんだ……」
少し酔った奈々美が、潤んだ瞳で俺を見つめる。
「寂しいよね。すごく……」
そのとき、奈々美の瞳から。
ひと粒の涙がこぼれた。
奈々美と俺は、渋谷駅に向かって歩く。
いつの間にか、奈々美は。
俺の肘に、腕を絡ませていた。
奈々美の、柔らかい胸の感触を感じながら。
俺は、ドキドキしていた。
「奈々美さん、俺送るよ。秋葉まで」
「ううん、いいよ!大変でしょ?」
俺は、それには答えずに。
奈々美と一緒に、山手線の電車に乗り込んだ。
「もう!強引なんだから……」と、奈々美は笑った。
そのとき、俺は。
今夜、必ず奈々美を落とす、と決めた。