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真希は、ゆっくりと頷きながら。
俺の目を、じっと見つめる。
寂しそうに見える、そんな真希が。
俺は、本当に愛おしかった。
もしも、恭子がこの部屋に現れなかったら。
俺は間違いなく、真希を抱いていたに違いない。
今の俺は。
そうならなかったことに、正直ホッとしていた。
もし、俺が真希を抱いてしまったとしたら。
これからの、俺と真希の関係は。
決して、今まで通りというわけにはいかないだろう。
だから。
結果的には、良かったんだよな……。
そんなことを考えながらも、俺は。
本当は、少しだけ残念な気がしていた。
俺の部屋の鍵を、真希に渡して。
俺は、部屋を出た。
真希の視線が、背中に痛かった。
恭子の部屋に戻る途中で。
俺は、すっかり明るくなった空を見上げた。
くしゃくしゃになったマルボロを、一本取り出して。
Bicの赤い100円ライターで火を点ける。
阿川は、一体何から逃げたかったのだろうか?
赤い服の彼女か、それとも……。
本当のことは、永遠に分からない。
阿川は遺書というか、メモさえも残さなかったのだから。
でも。
俺には、ひとつだけ分かっていたことがあった。
それは。
阿川は、きっと楽になりたかったんだ、ということだ。