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早く、早く恭子を見つけなければ!


俺は、そんな脅迫観念に突き動かされていた。


俺は、息を切らせながら。


深夜の江古田の街を走る。



今までの経験から言うと、恭子はひとりでどこかにいると思う。



でも……。


もしかしたら。


誰か別の男と、一緒に居るのかもしれない。



もし、そうだとしたら。


それはそれで、複雑な事実だ。



でも。


ひとりで、街をさまようよりも。


恭子が、誰かと一緒に居てくれたほうが安心ではある。



そして。


そんな誰かが、恭子をずっと守ってくれるならば。


俺は、やっと恭子と離れることが出来るのに……。



そんなことを考えながら、ふと立ち止まった俺は。


マルボロのソフトパックから、タバコを一本取り出して。


100円ライターで火を点けた。


青紫色の煙が、ゆっくりと上っていく。


ひんやりと冷たい風が、俺の体を冷やした。


いつの間にか、秋も深まっていた。



薄着のまま、部屋を飛び出した俺は。


それでも、薄く汗をかいていたのだ。



恭子は。


たぶん、本当に死んだりはしない。



根拠などないが、俺は。


ずっと、そんな風にタカをくくっていた。



でも。


阿川の死を実感してしまった俺は。


以前のように、脳天気ではいられなかった。



阿川の死が。


恭子に対する、俺の恐怖感を増大させていたのだ。