45
えっ?
俺は真希を抱きしめたまま、恭子を呆然と見る。
どうして、ここに恭子が?
恭子は。
俺の顔を冷静に、じっと見ていた。
そして、一瞬ニッコリと笑って。
ゆっくりと、俺の部屋から出て行く。
「真希、ごめん!」
俺は、真希に声を掛けながら。
恭子を追うために、部屋を飛び出した。
階段を静かに下りながら、俺は気ばかりが焦る。
恭子は、明らかに酔っていた。
恭子のあの目は、かなり呑んだ目だ。
そして。
そんなときの恭子は、いつもの恭子ではない。
恭子とは、美佐のことで良く揉めた。
俺には美佐がいることは、恭子は良く理解していた。
でも。
それを承知した上で、俺と一緒に居るとしても。
酔うと恭子は、そのことで俺を激しく責めた。
恭子と一緒に居るのは、正直辛かった。
でも。
俺が恭子に別れ話を切り出した、そのとき。
恭子は、俺の目の前で手首を切った。
幸いにも、カッターナイフの傷は浅くて。
大事に至らなかったことは、幸いだったが。
しかし。
「別れるなら、死んでやる!」
恭子のそんな言葉が、俺を縛っていた。
でも。
酔っていないときの恭子は、優しくて。
そんな恭子を、俺は大切にしたかった。
俺は、恭子を探して江古田の街を走る。
どこだ!恭子!