43
俺は、苦労しながら狭くて急な階段を登る。
俺の部屋は、大家さんが住む家の二階にあった。
時間も時間だし、大きな音を立てる訳にはいかないのだ。
真希を俺の部屋に連れて来たのは、初めてのことだった。
四畳半と、三畳のリノリューム張りのキッチン。
風呂なしトイレ共同、家賃二万四千円也。
女の子を、自信を持って呼べるスペックの部屋ではない。
それに。
壁が薄くて、話し声だって隣に筒抜けだし。
怪しい行為に不向きな部屋なのは、確かだった。
とは言え、この部屋で恭子を何度も抱いた俺だが。
もちろん、今。
真希を抱こうなんて、俺は思っていない。
でも……。
真希をベッドに寝かせた俺は。
真希の顔のすぐそばで、真希の寝顔をじっと見ていた。
真希って、キレイな顔してるんだな……。
俺は、そのとき。
なぜか急に、真希のことを愛おしく感じてしまっていた。
いや、そんなはずは無い……。
俺は、自分で自分の感情を否定する。
そのとき。
「……ねぇ、ひろ。あのとき、寝たフリしてたんでしょ?」
目を閉じたまま。
真希が、そう呟いた。
えっ?
そして、ゆっくりと目を開けた真希が。
あの、夏の日と同じように。
俺に、ゆっくりとキスをした。
そして。
「めちゃめちゃにして、ひろ」と、真希は言った。