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俺は、苦労しながら狭くて急な階段を登る。


俺の部屋は、大家さんが住む家の二階にあった。


時間も時間だし、大きな音を立てる訳にはいかないのだ。



真希を俺の部屋に連れて来たのは、初めてのことだった。


四畳半と、三畳のリノリューム張りのキッチン。


風呂なしトイレ共同、家賃二万四千円也。



女の子を、自信を持って呼べるスペックの部屋ではない。



それに。


壁が薄くて、話し声だって隣に筒抜けだし。



怪しい行為に不向きな部屋なのは、確かだった。


とは言え、この部屋で恭子を何度も抱いた俺だが。



もちろん、今。


真希を抱こうなんて、俺は思っていない。


でも……。



真希をベッドに寝かせた俺は。


真希の顔のすぐそばで、真希の寝顔をじっと見ていた。



真希って、キレイな顔してるんだな……。


俺は、そのとき。


なぜか急に、真希のことを愛おしく感じてしまっていた。



いや、そんなはずは無い……。


俺は、自分で自分の感情を否定する。



そのとき。


「……ねぇ、ひろ。あのとき、寝たフリしてたんでしょ?」


目を閉じたまま。


真希が、そう呟いた。



えっ?



そして、ゆっくりと目を開けた真希が。


あの、夏の日と同じように。


俺に、ゆっくりとキスをした。



そして。


「めちゃめちゃにして、ひろ」と、真希は言った。