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俺と真希は、表面上は楽しくふたりの時間を過ごした。


しかし。


本当は、ふたりとも楽しくなんてないのだ。



ただ。


今の俺にとっても、真希にとっても。


きっとこの時間が、いま。


ふたりには、必要な時間だったんだとお互いに分かっていた。



俺は、左手に巻いたシチズンアナログクォーツの腕時計を見る。


針は、午前2時を回っていた。



眠そうな真希を見ながら、俺は考えていた。


このあと、どうしようか?と。



もちろん、真希をどうこうしようとなんて、まったく思っちゃいない。


俺には、恭子だっているのに。


真希とそんなややこしいことになるは、もちろんイヤだった。



「なぁ、真希。そろそろ出る?……っていうか、俺ん家で寝ろよ。俺は、恭子のとこ行くからさ」



俺のそんな言葉に。


真希はニッコリと笑って、ゆっくりと頷いた。



深夜の江古田の街を、俺は真希を支えながら歩く。


江古田の駅から俺のアパートまでは、俺の足で10分ほどの距離だ。


しかし。


フラつく真希を支えながらだと、倍以上の時間が掛かりそうだ。



真希は、俺に抱きつきながら歩いた。


そして、涙を浮かべながら。


何度も何度も、俺にこう言った。



「……ごめんね、ごめんね……」と。



真希……。



俺は、そんな真希の気持ちが痛かった。


その言葉は、もちろん。


阿川に向けられたものだと、俺には分かっていたからだ。