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その居酒屋は、駅の南口にあった。
俺と真希は夜の江古田の街を、並んでその店へと歩く。
俺は、左手に巻いたシチズンアナログクォーツの腕時計を見る。
針は、午後11時を回っていた。
そして。
居酒屋に着いた俺と真希は。
カウンターの席に、並んで座った。
「うれしいな!ひろとふたりで呑めるなんて!初めてじゃない?」
今日の真希は。
やはり、無理してハシャいでいるように見えた。
真希は、グレープフルーツサワーと焼き鳥を何本か注文した。
俺は、サイダーとエイヒレをたのむ。
酒を呑まなくても、エイヒレは旨いのだ。
しかし。
やはり、今日の真希はムダに明るい。
真希は。
さっきまで編集していた映画の話を、楽しそうに話した。
しかし、それは。
無理やり阿川のことを。
忘れようとしてやっているように、俺には見えた。
「じゃあ、乾杯!……ごめん。じゃなくて、献杯だ、ね……」と、真希は言った。
「……うん。献杯、だな」と、俺は敢えて明るく言った。
真希……。
俺は、真希のそんな姿を見るのが辛かった。
阿川のことは、受け止め方やダメージだって。
ひとそれぞれ違うと思う。
そして、それを自分の気持ちのなかでどう解決するのかも。
それはまた、ひとそれぞれの問題だ。