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俺と真希は。
元々、微妙な関係だった。
あまりにも、近しい仲間がゆえに。
好意はあっても、それが恋愛感情になるなんて。
まったく、想像さえもしなかった。
それは、真希も。
俺に対して、同じように感じていたはずだ。
その年の夏も。
一年前の夏と同じように。
真希と俺は、ひと夏を毎日一緒に過ごした。
映画の撮影は、早朝から深夜まで。
あるいは、夕方から朝まで続く。
そんな毎日を、俺は真希とずっと一緒に過ごした。
俺は、恭子よりも。
真希と一緒にいる時間のほうが長かったわけだ。
ところで。
俺は3年生の春に、初めて自分の車を買った。
映画を撮影するには、車が必要だったからだ。
でも。
やはり、実家がガソリンスタンドで。
子供の頃から、車をいじりながら育った俺は。
普通の機材車に使うような、ワンボックスの車は選ばなかった。
レモンイエローの(昭和)55年式。
ISUZUジェミニZZ-R。
丸目ライトでFR。
もちろんエンジンは、電子制御のツインカムだ。
俺は、靴屋の倉庫や映画館のオールナイトのバイトとかをしながら。
購入資金の60万円を、必死の思いで貯めた。