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それから、俺は。


目を閉じて、少しの時間、横になったあと。


シャワーを浴びて。


朝早く、大学に向った。



夢なら、いいのに……。



学校に行っても、誰もいなくて。


こんな事実が。


俺が見た、ただの夢だったらいいのに……。



そんなことを考えながら。


俺は、学校へと足早に歩いた。



映画学科棟の前には。


すでに、真希やさっちゃん、ふじちゃんや松本がいた。



ふじちゃんは、監督コースで。


阿川とは、とりわけ仲が良かった。


松本も、そうだった。



みんな無言で、俺に目で挨拶をした。



真希が、俺のそばに走り寄って来る。



「真希……本当、なのか?」


俺は、真希にそう訊く。



真希は、俺の手首をギュッと掴みながら。


コクンと、頷いた。


「そうか……」



それから、俺たちは。


長い時間、じっとその場所にいた。



後で分かったことだが。


阿川は、自分のスクーターで。


数日間、いろいろな場所を走っていたらしい。



そして、最後に。


自分の映画の撮影で使った、ビルの屋上から。


阿川は、空を飛んだ。



発見されたとき。


阿川は、フルフェイスのヘルメットをかぶったままだったという。



俺が見たのは、夢では無かったのだ。



俺は、そんな不思議な事実を。


ごく当たり前のように受け止めていた。



そして。


阿川の死は、俺たち仲間の意識を微妙に変えていた。