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「わたし、エミさんがいたから……先輩のこと、あきらめようと思ったんだよ……」


俺は、思わず恭子の顔を見た。


恭子は。


そのとき、静かに涙を流していた。



やばい……。


俺は、女の涙に弱いのだ。



「大阪の彼女のことなんて、どうでも良いの……わたし、先輩のそばにいられたら。それだけで……」



恭子……。


俺は、恭子の長くてストレートな髪を優しく撫でる。



「先輩……、して。何しても、良いから。お願い……」



恭子の、そんな言葉を聞いた俺は。


そのとき。


思考が、停止してしまったに違いない。



俺は、ゆっくりと恭子を抱きしめながら。


恭子の耳元で、こうささやいた。


「エミは……もう、いないよ……」



そして、俺たちは。


長いキスを交わした。



その夜。


俺と恭子は、激しく愛し合った。



そして。


俺と恭子は、始まってしまったのだ。



恭子は。


とても従順な女だった。


俺の言うことを、何でも訊く恭子のことを。


俺は、手放せなくなってしまった。



それでも、俺は。


恭子を本気で、愛そうとはしなかった。


だって。


俺には、美佐がいる。



そんな形で始まった、俺と恭子は。


落ち着いた生活なんて、送れるはずがなかったのだ。