17
「わたし、エミさんがいたから……先輩のこと、あきらめようと思ったんだよ……」
俺は、思わず恭子の顔を見た。
恭子は。
そのとき、静かに涙を流していた。
やばい……。
俺は、女の涙に弱いのだ。
「大阪の彼女のことなんて、どうでも良いの……わたし、先輩のそばにいられたら。それだけで……」
恭子……。
俺は、恭子の長くてストレートな髪を優しく撫でる。
「先輩……、して。何しても、良いから。お願い……」
恭子の、そんな言葉を聞いた俺は。
そのとき。
思考が、停止してしまったに違いない。
俺は、ゆっくりと恭子を抱きしめながら。
恭子の耳元で、こうささやいた。
「エミは……もう、いないよ……」
そして、俺たちは。
長いキスを交わした。
その夜。
俺と恭子は、激しく愛し合った。
そして。
俺と恭子は、始まってしまったのだ。
恭子は。
とても従順な女だった。
俺の言うことを、何でも訊く恭子のことを。
俺は、手放せなくなってしまった。
それでも、俺は。
恭子を本気で、愛そうとはしなかった。
だって。
俺には、美佐がいる。
そんな形で始まった、俺と恭子は。
落ち着いた生活なんて、送れるはずがなかったのだ。