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「とりあえず、さ。少し早いけど、なんか食おうか」
俺は、冷静を装ってエミにそう言った。
左手に巻いたシチズンアナログクォーツの針は、午後6時35分を指していた。
エミは俺の目を見つめながら、うんっと頷いた。
並木通りから少し歩いた俺たちは、ステーキ屋に入る。
そこは、木造りのテキサス風の内装だった。
いかにもステーキ屋、という感じの店だ。
俺たちは、同じチーズハンバーグステーキをたのむ。
俺も、エミも好きなメニューだ。
「わぁ、やっぱりひろとは気が合うなっ!」と、エミが笑った。
俺は返事を返す代わりに、微笑みながらゆっくりと頷く。
こんな風に食事をするのも、久しぶりだな……。
エミの気持ちを受け入れてしまった、あの夜から。
俺たちは、ずっと一緒だった。
俺は、エミの顔をじっと見る。
エミは、無理をして笑顔を作ろうとしていた。
エミ……。
俺も同じように、無理して笑おうとしていた。
素直に笑い合えない、こんな状況が。
今の、俺とエミの現実なのだ。
それでも。
俺たちは、楽しそうに食事をする。
食後のコーヒーを飲んでいた、そのとき。
エミが、ゆっくりと口を開いた。
「ねぇ、ひろ……。あたしと、クリスマスしない?ちょっと遅いけど……」