8
エミは、じっと俺の顔を見つめていた。
俺は、いたたまれなくなって、視線を外す。
しかし。
エミは、いったい何を考えているのだろうか?
自分から、広島に帰ったエミだ。
それならば。
俺に逢うことだって。
こんな態度を取ることだって。
俺には、その理由が分からなかった。
「ねぇ?ひろ。好きなひと出来た?」
エミは、いたずらっぽくそんなことを言う。
「出来ないよ、そんなの。誰でも良い訳ないじゃん……」
俺は少しムッとしながら、エミにそう言った。
そのとき、エミは。
微笑みながら。
涙を一粒こぼした。
「なんか、ね。ひろと離れても、あたし変われないの」と、エミが口を開く。
つまりは、こういうことだ。
「あたし、ひろを忘れようと思った。でも、まだダメみたい」
なるほど。
それは、そうだ。
だって。
俺だって、同じだからな……。
心の中だけで、そう言った俺は。
エミのキレイな顔を、じっと見る。
お互い、嫌いになって離れたわけじゃない。
だからこそ。
始末が悪いのだ。
「……忘れなきゃ、ダメだよ、ね?」
俺の目を、じっとエミが見つめる。
そのとき、俺は。
そんなエミを、強烈に抱きたくなっていた。