『恋愛小節1987』 出雲 裕雪




社会に出るのなんて、イヤだった。



ホントは、夢が叶ったわけじゃない。


たまたま偶然、俺がそこにハマっただけのことだ。



俺は、その会社への内定が出たことを、学科の教授から聞いた。


その会社から、正式に知らされる前に。



1986年の、秋のことだ。


俺は、あるテレビ制作会社から内定を貰った。


技術職での採用。


つまりは、将来テレビカメラマンをやることが、ほぼ決まったとも言える。



俺は、ずっとやりたかった夢が叶った。


ハズだった。


でも。


爆発的な喜びがあるわけでもない。



なんとなく受けて、なんとなく受かってしまった。



そもそも。


何をやっている会社か、最初は知らなかったくらいだ。



たまたま、学科の廊下ですれ違った友達が。


その会社を受けるって、決まっていて。


そのついでに受けたのが、たまたま俺だっただけだ。



俺の大学からは、20人ほどが受けた。


そして。


俺だけが受かった。



約2000人が受けて、6人だけが内定を貰った。


そのうちの一人が、なぜか俺だった。



俺なんかが受かるなんて、悪い冗談のような気がした。



そう。


何が言いたいのか、と言うと。


俺は、なんとなく大学を卒業して。


なんとなく、就職してしまったということだ。