48 『お湯が沸いたから』



会社を出たぼくは、君に電話をかける。



昨日は、ほんとにゴメンね!


せっかく、久しぶりに逢えると思ったのに。


行けなくて、ほんとに残念だったよ……。



君は、ううんって許してくれた。



あぁ。


やっぱり君は、良い女だよな。



そんなことを考えながら。


それからの、約5分間。


ぼくたちは、久しぶりに。


ゆっくりと、楽しく話をしていた。



でも、突然。


君が、こう言った。



「あっ、ゴメン!お湯沸いちゃった!」


「……そっか。じゃあ、またね……」


そう言って、ぼくは。


そそくさと、電話を切る。



やっぱり、あの頃とは。


決定的に、違うんだよな……。



ぼくは、そんな風に呟きながら。


曇りがちの夜空を、独り見上げた。


ゆっくりとひとつ。


ため息をつきながら。




『お湯が沸いたから』