36 『寂しい夜』



夏の終わりは、なんだか。


とても、もの悲しい。


蝉の声だって。


なんだか、寂しそうに聞こえるし。



あのさ。


爽やかな夜風、って言うけど、さ。


ちょうど良い夜風なんて。


すげぇ珍しいと思うんだよね、俺。



やっぱ、ちょっと蒸し暑かったり。


薄着だと、涼しすぎたり。



えーっと。


何が言いたいのか、と言うと。



何事も。


なかなかうまい具合には、行かないってことさ。



やっぱり、うまく行くなんて、奇跡的に難しいのかもな……。



そんなことを、考えながら。


俺は独り、膝を抱える。



独りだと広すぎるな、この部屋は……。


俺は、やけに広く感じるリビングをゆっくりと見渡した。



君がいないと、寂しいよ……。



俺は、そんな風に独り言を言った。



そのとき。


リビングのドアが、突然開いた。



「ただいま~!ごめんね、遅くなっちゃって!」



俺は、返事をする代わりに。


君のことを、ギュッと抱きしめる。



そして。


ニッコリと笑って。


優しくキスをする。



俺たちって、奇跡的だよな……。



そんなことを考えながら。


俺は、もう一度君をギュッと抱きしめた。




『寂しい夜』