34 『特別な彼女だから』
随分、風も涼しくなって来たよなぁ……。
秋の気配を感じる、そんな夏の終わりの夜。
俺は、彼女に逢うために新宿に出かけていた。
久しぶり、だよなぁ……。
俺は、彼女と逢った恵比寿の夜を思い出す。
彼女と最後に逢ったのは、去年の12月のことだった。
あれから、もう3つ目の季節が巡ろうとしていた。
彼女は、いつも忙しくて。
無理やりにでも逢おうとしなければ、なかなか逢えない女だった。
俺とは、18も歳の離れた彼女は。
まだ、23歳。
でも。
彼女は一緒にいて落ち着ける、既にかなりイイ女だ。
だからかも、知れないが。
俺は、彼女に逢わなくても。
メールのやり取りだけで、なんだか安心出来ていたんだ。
約束の時間まで、まだ2時間もあった。
俺は、いつものようにカフェでお茶を飲みながら。
ケータイで、下らない恋愛小説を書いていた。
そのとき。
ケータイにメールが着信した。
彼女からだ。
ゴメンナサイ!
今日、無理みたい!
近いうちに、ダーツに連れて行ってねっ!
ゴメンねっ!
って、おいおい……。
俺は、苦笑いしながら。
実は、ちょっとホッとしていたんだ。
ホントは。
ちょっと疲れ気味の、こんな顔を。
彼女に、見せたくはなかったからだ。
それに。
そんなに素敵な彼女、だから。
あんまり、しょっちゅう逢ってしまうと。
本気になりそうな、俺だったから……。
彼女が、俺に好意を持っているのは知っていた。
だけど……。
それでも。
やっぱり俺は、彼女に逢いたいんだよな……。
近いうちに、ダーツに行くぞ!
と、俺は彼女にメールを入れる。
俺と彼女の時間は、ゆっくりと流れている。
また、すぐに逢えるさ。
今までだって、なるべく逢わないようにセーブしてきたんだ。
だから、大丈夫……。
そして、俺は。
今でもはっきりと覚えている、彼女の笑顔を思い出しながら。
彼女が登場する小説の続きを、ゆっくりと書き始める。
まだまだ、当分彼女は若いんだよなぁ。
なんてことを、考えながら。
『特別な彼女だから』
了